「高血圧を指摘され、運動を勧められたけど、どのような運動をしたらいいの?」
「運動で高血圧が改善されるのは、本当?」
20歳以上の日本人のおよそ2人に1人は高血圧といわれています。
高血圧を改善するためには、食習慣の改善やお薬による治療を思い浮かべますよね。しかし、運動をおこなうことも、血圧を下げる効果があるとご存知でしょうか。
運動は、高血圧の改善に効果的です。しかし、高血圧の方が、運動の正しい方法を知らずにおこなうと危険を伴います。
本記事では、運動が血圧に与える影響や効果的な運動の方法について紹介します。
また、安全な高血圧改善の運動をおこなってもらうために、運動をする際の注意点についても解説しています。
ぜひ、ご参考にしてください。
高血圧が続くとどうなる?
血圧が高い状態が続くと、健康上の問題が起こる危険性があります!
「高血圧を指摘されたけど、とくに症状もないし気にしていない」
「まだそんなに高くないから、治療しなくて大丈夫」と思うことは、危険です!
高血圧には自覚症状がほとんどありません!
高血圧を指摘されたにもかかわらず、血圧が高い状態を放置してしまうと、心臓や脳血管の負担になります。その結果、心筋梗塞や脳卒中、視覚障害などの重大な合併症を引き起こしてしまいます。
また、合併症の発症により、身体や認知機能、生活機能を低下させてしまう可能性もあります。
将来、介護が必要となるケースも珍しくありません。
自分や家族のために、健康な身体を維持できるよう、運動をはじめてみませんか?
なぜ高血圧の改善に運動療法がなぜいいの?
運動にも、血圧を下げる効果があります。
運動をすると血圧が上がると考える方が多いのではないでしょうか。
運動をすることで、一時的に血圧は上がります。
しかし、繰り返し運動をおこなうことで、血管の弾力性を高めることができ、血圧を下げることができるのです。
血圧が高くなる理由は?
血管の弾性力が低くなることで、血圧が高い状態が続きます。
血液は、心臓によって全身に送り出され、血管を通って体内を循環します。
そのときに、血液が血管の壁にかかる圧力が血圧です。
この血圧が高い状態が続くことが高血圧となります。
「収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上」が高血圧と診断される基準です。
血圧が高い状態が続くのは、動脈硬化などが原因で血管の弾力性が低くなり、血管の壁にかかる圧力が高くなるためです。
運動で血圧を下げる?!
血管の弾性力を高めるには、運動が必要になります。
血圧を下げるためには、血管の弾性力を改善させなければなりません。
運動をおこなうと、筋肉に酸素や栄養を供給しようと、血液の量が増えます。そのため、心臓が多くの血液を送りだします。
そのように心臓からの血液の量が増えることで、血管が一時的に広がります。
これを繰り返すことによって、硬くなっていた血管の弾力性が高まります。
血管の弾力性が高まると、血管の伸び縮みがスムーズにおこなえるようになり、血管の壁にかかる圧力が低くなります。つまり、血圧を下げることになるのです。
運動療法の対象者は?
高血圧と指摘された方全員が運動療法をおこなってよいというわけではありません。
- Ⅱ度以下の血圧値(収縮期血圧160~179mmHgかつ/または拡張期血圧100~109mmHg)
- 心疾患・脳血管障害のない高血圧症の方
上記が、高血圧における運動療法の対象者とされています。
高血圧改善の運動療法が禁忌となる方
重度の高血圧や重篤な合併症がある場合は、運動が禁忌となることがあります。
- Ⅲ度高血圧に該当
- 心筋梗塞の既往がある
- 狭心症や弁膜症に罹患している
- 重症な腎症や網膜症を併発している
- 心臓の機能が低下している
上記の方が運動療法が禁忌となるのは、運動によって心臓の負担が増え、症状を悪化させてしまう可能性があるからです。
高血圧改善のための運動療法がかえって、健康状態を悪くさせることがあるので注意しましょう。
運動療法をおこなえる方は、「Ⅱ度以下の血圧値(収縮期血圧160〜179mmHgかつ/または拡張期血圧100〜109mmHg)で心疾患・脳血管障害のない高血圧症の方」と覚えておきましょう。
分類 | 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) |
Ⅰ度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 |
Ⅱ度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 |
Ⅲ度高血圧 | ≧180 かつ <90 |
疾患の程度によっては、運動療法が禁忌の高血圧の方でも、運動することができる場合があります。運動をおこなえるか、主治医に相談してみましょう。
運動メニューとその方法を紹介!!
高血圧の改善に効果的なおすすめの運動と、運動の強度や時間について紹介していきます。
正しい方法で運動を行うことで、高血圧を改善する効果があるので、ぜひご参考にしてください。
有酸素運動は血圧を下げるのに効果的な運動は?
有酸素運動は、血圧を下げるのに最も効果的な運動療法の一つです。
有酸素運動とは、筋肉を動かすのに酸素を必要とする運動のことです。
有酸素運動をおこなうと、筋肉は酸素とともに体内の脂質や糖質をエネルギー源にします。
そのため、からだは筋肉へ酸素などを届けようと、心臓から送り出す血液の量を増やします。そして、血流が増加することによって、血管が拡張され、血圧が下がります。
このように、有酸素運動をおこなうことは、血圧を下げることにつながるのです。
有酸素運動をすることで、高血圧の方は収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させることができるといわれています。
また、有酸素運動は高血圧の改善だけでなく、その他の生活習慣病の予防・改善や脂肪燃焼などにも効果が期待できます。
血圧を下げるための有酸素運動とは?
自宅でできる有酸素運動についても紹介!!
血圧を下げるための有酸素運動について紹介します。
ウォーキング、ステップ運動、スロージョギング、その他に、もも上げ運動や踏み台昇降などが挙げられます。
おすすめの有酸素運動を5つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- ウォーキング:歩くことは身近な有酸素運動です。通勤やエレベータを使用せず階段を使う、車やバスの利用を避けるなど、日常的に取り入れやすく、比較的おこないやすいといえます。
〈ウォーキングの正しいフォーム〉
- 背筋を伸ばして、胸をはる顎を引き、少し遠くをまっすぐ見る
- 頭は揺らさないようにする
- 力まず、肩の力を抜く
- 自然な呼吸で、リズムよく歩く
正しいフォームでウォーキングをして、運動効果を高めましょう。
- スロージョギング:ウォーキングより少し早いペースでジョギングを行います。会話できるペースで走ればよいので、ウォーキングに慣れてきた方におすすめです。続けることで、確実に体力アップでき、基礎体力や筋力の向上に繋がります。
スロージョギングのような軽い運動でも、フォームが乱れると足に負担がかかります。スロージョギングの正しい方法について説明します。
〈スロージョギングの正しいフォーム〉
- 背筋を伸ばして、顎を引きまっすぐ前を見ます
- 両足は肩幅程度で、まっすぐ走るように進む
- 膝やつま先も、まっすぐに保つ歩幅は狭く、少しづつ進むドタバタせず、足音が立たないように進む
- 進むときは太ももをあげるイメージでおこなう
- 水中歩行:腰や膝などの関節にかかる負担が少なく、足腰の弱い方にはおすすめの運動です。水中歩行だけではなく、水中エアロビクスなど音楽に合わせてできる運動は、楽しみながら続けやすいでしょう。
効果を高める水中歩行の方法です。
〈水中歩行の方法〉
- 背筋を伸ばして、顎を引きまっすぐ前を見ます
- バランスを取りながら、前に1歩ずつ進む
- 呼吸が乱れない程度にゆっくり進む
- もも上げ運動:太ももを高く上げる「もも上げ運動」も有酸素運動になります。足踏みの要領で、交互に太ももを高く上げ、腕を大きく振ることがポイントです。
正しいもも上げ運動の方法について説明します。
〈もも上げ運動の方法〉
- 両脚は肩幅程度に開く
- かかとを少し上げ、左右交互にふとももを意識して足をあげる
- 腕をしっかり振る
- 踏み台昇降(ステップ運動):「踏み台昇降」も有酸素運動になります。高さのある台(10㎝〜20㎝ほど)に昇ったり降りたりを繰り返しましょう。
覚えてほしい、ステップ運動の方法です。
〈ステップ運動の方法〉
- 踏み台に片足をのせるもう片方も足台にのせる
- 最初に乗せた足を後ろに引き、床に下す
- もう片方も床に下す
台がない場合は、階段などでもできます。ふらつく方は、何かにつかまりながら行い、転倒に気をつけてください。
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屋外の運動はやり始めるのに少し抵抗を感じますよね…
「もも上げ運動」や「踏み台昇降」は、天候にも左右されず、自宅でも手軽におこなうことができる有酸素運動です。音楽を聴きながら、テレビを見ながらでき、日常に取り入れやすい「ながら運動」です。
運動をはじめたばかりの方には、屋内でできる「ながら運動」はオススメです。
有酸素運動をおこなうときの強度と時間、頻度は?
有酸素運動は、できれば毎日30分以上おこなうことが望ましいです。
しかし、長時間続けて行わなければならないというわけではありません。
1回の運動で少なくとも10分以上続けておこない、合計で30分以上おこなうことが推奨されています。
「ややきつい」と感じる程度の運動の強度がすすめられています。息がはずむ、少し汗ばむ程度でおこないましょう。
何よりも、継続して行うことが大切です
無理に長時間おこなったり、「きつい」と感じるような運動は避けましょう。
頻度は、週に3〜5回を目標に、はじめてみてください。
強さ | 「ややきつい」と感じる程度、息がはずむ、少し汗ばむ |
時間 | 10分以上の運動を合計して30分以上 |
頻度 | 週に3~5回 |
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎのストレッチをすることも、血圧を下げるのに効果的です。
ふくらはぎの筋肉が下半身の血液を心臓へポンプする役割があり、「第二の心臓」とも言われます。
ふくらはぎのストレッチをおこなうことで、ふくらはぎの筋肉が緩み血流が改善されます。
そして、全身の血液がスムーズに流れるようになります。
そのため、「ふくらはぎのストレッチ」も血圧を下げるのに効果的です。
ふくらはぎのストレッチの方法について説明
「ふくらはぎのストレッチ」の方法を説明します。
かかとの上げ下げをおこないます。
立っておこなっても、座っておこなってもOKです。
立っておこない、かかとをあげた際にふらつく方は、壁や安定した椅子を支えにしておこないましょう。
寝た状態でも、足首を曲げたり、伸ばしたりすることで、ふくらはぎに刺激を与えることができます。
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ふくらはぎのストレッチは、歯磨きや家事の合間、テレビを見ながらでも手軽におこなえるのでいいですね。
ふくらはぎのストレッチの頻度と回数は?
1セット10回を、朝晩2セットずつを目安に、疲れない範囲でおこなうのがおすすめです。
【ストレッチをおこなう際に気を付けてもらいたい点】
- 息を止めない
- 反動をつけない
- 少し痛気持ちいい程度で行う
正しくおこなわないとケガの原因にもなります。上記の3点に気をつけ、おこなっていきましょう。
高血圧改善が期待できる筋力トレーニング
筋力トレーニングも、血圧を下げるためには必要な運動です。
筋肉量が減ることは、血圧を上げる原因になります。
心臓は全身に血液を送り出す役割があります。そして、全身の筋肉は、血液を手足の末端まで送りだす、補助ポンプの役割をしています。
全身の筋肉量が減ると、手足の末端まで血液が行きにくくなります。
その結果、心臓がより強く血液を送り出そうとするため、血管への負荷が増えてしまいます。そして、血圧が高くなるのです。
加齢とともに落ちていく筋肉量を維持していくためにも、筋力トレーニングをおこないましょう。
高血圧の改善におすすめな筋力トレーニングについて、紹介します。
筋力トレーニングの種類
筋力トレーニングでは、大きな筋肉である、胸、背中、下肢をまんべんなく、おこなうとことで高い効果が得られます。
種目を各大筋群から1種類ずつ選びましょう。
大筋群 | 運動種類 |
胸 | ダンベルフライ・チェストプレス・水中で胸を使う運動 |
背中 | ダンベルロウイング・ラットプルダウン・水中で背中を使う運動 |
下肢 | ダンベルスクワット(ハーフ)・レッグプレス(ハーフ) |
![運動療法](https://pro-nurse.org/wp-content/uploads/2023/07/IMG_3708-1024x1013.jpeg)
筋力トレーニングの強度や回数、頻度は?
強さは、最大の力の60〜80%ほどでこなってください。回数は10〜15回で、1〜2セットおこなうことが望ましいです。筋力トレーニングをはじめたばかりの時期は、週に2〜3回ほどで無理のない程度でおこないましょう。
負荷の重さ | 軽い |
回数 | 10~15回/セット 1~2セット |
頻度 | 週に2~3回 |
安全におこなうことが大切です。いきなり、毎日おこなったり、回数を増やすとケガをする可能性があります。
血圧を下げる効果は筋力トレーニングでもありますが、単独で行うだけでは大きな効果は期待できません。
血圧を下げるのに最も効果的な方法は、有酸素運動と併用し筋力トレーニングをおこなうことです。
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自分のペースを守りながら、有酸素運動とストレッチをおこない、慣れてきたら非常に軽い筋力トレーニングを加えていくことがいいですよ。
高血圧改善の運動療法の注意点
医師の許可を得て、自分の体力や体調に合わせて、運動をはじめていきましょう。
無理をして身体を壊しては意味がありません。
高血圧改善の運動療法を、安全に取り組むために、注意していただきたいことをお伝えします。
少しずつ運動量をはじめていく
運動を始めるタイミングや量を間違えてしまうと、心疾患や脳血管障害など他の健康障害を引き起こすリスクになります。
高血圧の方に有酸素運動や筋肉トレーニングを行うことはおすすめですが、ふだん運動習慣がない方が運動を急におこなうと、からだに負担がかかります。
基礎体力・年齢・体重・健康状態をふまえて運動量を決めましょう。
今まで運動習慣がなかった方は、掃除や普段の買い物など、生活の中で活動量を増やすことから始めましょう。
運動は何よりも継続しておこなうことが大切です。
目標にとらわれず、無理をせず、自分のペースでおこなっていきましょう。
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運動を始める前は、準備運動をしっかりおこなうことも忘れずに。
水分補給を意識しておこなう
運動中に必ずしなければならないが、水分補給です。
「のどが渇いた」と感じてから飲むのではなく、運動中に意識して定期的に水分を摂るようにすることが大切です。
水分が体に足りていないと血液が濃くなり、血の巡りが悪くなってしまいます。
血の巡りが悪い状態で頑張っても、筋肉へ十分な量の酸素や栄養が供給されず、運動効果が低下する結果になってしまいます。
特に高血圧の方は、脱水症状によって血管腔のトラブルを起こすリスクが高くなるので、運動時の水分摂取を忘れずに。
1回につき3〜4口程度でいいので、こまめに水分補給するように心がけましょう。
運動中は呼吸を忘れずに
運動中に力んだとき、つい呼吸を止めてしまいがちですが、それは絶対に避けましょう。
運動をおこなうと一時的に血圧は上がりますが、きちんと呼吸をおこなうことで、血圧の急上昇は防ぐことができます。
血圧の急上昇は頭痛やめまいを引き起こすだけでなく、最悪のケースでは心不全や脳血管障害、大動脈乖離などの重大な健康トラブルに繋がります。
安全に運動をおこなうために、運動中は呼吸を意識しながらおこないましょう。
運動の後にも注意しましょう
運動をおこなった後にも注意が必要です。
息切れが5分以上続き回復しないとき、1時間以上経過しても疲労感や筋肉の痛みが強いとき、前回の運動の時と比べて行えなくなっているときは、医師に相談しましょう。何か健康問題を抱えているかもしれません。
Q&A
高血圧を改善するための運動療法について、よくある質問についてお答えします。
高血圧に効果的な運動は?
有酸素運動やストレッチ、筋肉トレーニングです。併用し継続しておこなうことで、血圧を下げる効果があります。
高血圧の危険な運動は?
激しい有酸素運動や強度の強い筋肉トレーニングです。どちらも血圧を急速に上昇させ可能性があり危険です。また、逆立ちのように頭を下げることを行う運動は高血圧の方には適しません。
まとめ
高血圧を放置してしまうと、重大な健康障害を引き起こしてしまいます。
運動を始めることは少し気が重くなりますが、将来、健康問題に悩まされることのないように、小さな一歩を踏み出してみませんか?
また、高血圧の改善には、運動療法だけではなく、食塩制限、適正体重の維持、禁酒、禁煙を併せておこなうことが効果的です。
生活習慣を見直し、運動を取り入れ、高血圧の改善をすすめていきましょう。
室内で静かに運動したい人におススメ↓↓